1. 学習依存 DAG
「Dedekind 整域」「素イデアル分解」「局所体」「idele」は、類体論の文で別々に登場しますが、 実際には一つの長い道筋の上にあります。DAG では矢印 \(A\to B\) を「\(B\) を理解するには \(A\) が必要」と読みます。
重要なのは、線型な一本道ではないことです。たとえば Artin 写像には、 Galois 理論・素イデアル分解・局所体・イデールのすべてが同時に入ります。
類体論の「対応」「塔」「局所化」「Frobenius」「Artin 写像」を、DOT 言語と d3-graphviz で動かしながら読むための補助レポートです。 図は選択・編集・再描画できます。式は MathJax で表示します。
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d3, d3-graphviz を読むため、
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類体論の主張は、ひとことで言えば「体の可換拡大を、基礎体の算術的データで分類する」ことです。 抽象的に見える理由は、次のような異なる種類の対象が同時に現れるためです。
図にすると、どの対象が「同じ情報を別の言葉で表しているか」が見えます。 たとえば Hilbert 類体では
という同型が中心です。左辺はイデアル類、右辺は最大不分岐可換拡大の Galois 群です。 「イデアル類が Frobenius で Galois 元になる」という矢印をグラフで追うと、定理の構造が非常に見やすくなります。
何を先に理解すべきかを有向非巡回グラフで示す。
イデアル・Frobenius・類群・Galois 群の対応。
\((\mathbb Z/8\mathbb Z)^\times\cong C_2\times C_2\) の可視化。
剰余次数 \(f\)、分解数 \(g\)、分岐指数 \(e\) の関係。
非主類と Hilbert 類体の対応。
一様化元・単数群・Frobenius・惰性群の対応。
局所データを積で束ね、対角埋め込みで割る流れ。
法 \(\mathfrak m\) を大きくすると許される分岐が増える。
「Dedekind 整域」「素イデアル分解」「局所体」「idele」は、類体論の文で別々に登場しますが、 実際には一つの長い道筋の上にあります。DAG では矢印 \(A\to B\) を「\(B\) を理解するには \(A\) が必要」と読みます。
重要なのは、線型な一本道ではないことです。たとえば Artin 写像には、 Galois 理論・素イデアル分解・局所体・イデールのすべてが同時に入ります。
類体論で最も大切な図は、算術側と Galois 側の対応です。 不分岐素イデアル \(\mathfrak p\) は Frobenius 元 \(\operatorname{Frob}_{\mathfrak p}\) を定め、イデアル類群の類は Hilbert 類体の Galois 元になります。
注意すべき点は、一般の Galois 拡大では Frobenius は共役類としてしか定まらないが、 可換拡大では共役類が一点なので「元」として扱えることです。ここが類体論で 「可換」が本質的になる最初の場所です。
\(\mathbb Q(\zeta_8)=\mathbb Q(i,\sqrt2)\) は次数 \(4\) の可換拡大です。 Galois 群は
したがって中間体は三つあります: \[ \mathbb Q(i),\qquad \mathbb Q(\sqrt2),\qquad \mathbb Q(\sqrt{-2}). \] 図では底に \(\mathbb Q\)、上に \(\mathbb Q(\zeta_8)\)、中段に三つの二次部分体を置いています。
有限 Galois 拡大 \(L/K\) と不分岐素イデアル \(\mathfrak p\) に対し、 \[ \mathfrak p\mathcal O_L = \mathfrak P_1\cdots \mathfrak P_g \] と分解します。Galois 拡大では全ての剰余次数が同じで、 \[ [L:K]=efg \] です。不分岐なら \(e=1\) なので、Frobenius の位数が \(f\) になります。
\(K=\mathbb Q(\sqrt{-5})\) では \[ \operatorname{Cl}_K\cong C_2. \] 非主類の代表として \[ \mathfrak p_2=(2,1+\sqrt{-5}) \] を取れます。このイデアルはノルム \(2\) ですが、ノルム \(2\) の元は存在しないため主イデアルではありません。 一方で \((2)=\mathfrak p_2^2\) なので、類は位数 \(2\) です。
Hilbert 類体は \[ H_K=\mathbb Q(\sqrt{-5},\sqrt5)=\mathbb Q(i,\sqrt5) \] であり、 \[ \operatorname{Gal}(H_K/K)\cong C_2. \] 図では非主類が非自明な Galois 元に送られることを示しています。
局所類体論は、局所体 \(K\) に対して \[ K^\times \longrightarrow \operatorname{Gal}(K^{\mathrm{ab}}/K) \] という相互法則写像を与えます。有限次 Abel 拡大 \(L/K\) に制限すると、
不分岐拡大では一様化元 \(\pi\) が Frobenius に対応し、単数群 \(\mathcal O_K^\times\) は惰性と関係します。 ただし、幾何的 Frobenius と算術的 Frobenius のどちらを採用するかで逆元が現れるため、規約に注意が必要です。
大域類体論では、各場所 \(v\) の局所乗法群 \(K_v^\times\) を制限直積でまとめた \[ \mathbb A_K^\times \] を使います。対角埋め込みされた \(K^\times\) で割った \[ C_K=\mathbb A_K^\times/K^\times \] が idele class group です。大域 Artin 写像は
であり、有限 Abel 拡大 \(L/K\) に対して \[ C_K/N_{L/K}C_L \cong \operatorname{Gal}(L/K) \] という同型を与えます。
このレポートで使う DOT の基本は次の通りです。
digraph G {
rankdir=LR; // 左から右に描画
node [shape=box]; // ノードの形
A -> B [label="必要"]; // 有向辺
{rank=same; B C D;} // 同じ高さに配置
}
類体論の図では、包含を表すなら \(K\to L\)、写像を表すなら \(A\to B\)、 対応を強調したいなら両方向の矢印 \(A\leftrightarrow B\) のつもりで二本の辺を置く、といった使い分けをします。
図で \[ \operatorname{Cl}_K \longrightarrow \operatorname{Gal}(H_K/K) \] と描かれている矢印は、厳密には次の写像です。
ここで \(\mathfrak a\) は分岐素イデアルを含まない分数イデアルとして代表を取ります。 Hilbert 類体ではすべての有限素点で不分岐なので、ほとんどの素イデアルについて Frobenius が定まります。 主イデアル類が単位元に送られることが、Artin 写像がイデアル類群に降りる理由です。
\(\mathbb Q(\zeta_n)/\mathbb Q\) では、 \[ \operatorname{Gal}(\mathbb Q(\zeta_n)/\mathbb Q) \cong (\mathbb Z/n\mathbb Z)^\times \] です。素数 \(p\nmid n\) の Frobenius は \[ \zeta_n\mapsto \zeta_n^p \] で与えられます。したがって素数の分解型は、\(p\) の \((\mathbb Z/n\mathbb Z)^\times\) における位数で決まります。