2. 演習一覧
有限群 \(G\)、複素ベクトル空間 \(V\) に対し、写像 \(\rho:G\to GL(V)\) が表現であるための条件をすべて書け。また、\(\rho(g^{-1})\) は \(\rho(g)\) とどう関係するか説明せよ。
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表現とは群準同型 \(\rho:G\to GL(V)\) のことなので、任意の \(g,h\in G\) について
\[
\rho(gh)=\rho(g)\rho(h),\qquad \rho(e)=I_V
\]
が必要です。このとき
\[
I_V=\rho(e)=\rho(gg^{-1})=\rho(g)\rho(g^{-1})
\]
かつ同様に \(\rho(g^{-1})\rho(g)=I_V\) なので
\[
\rho(g^{-1})=\rho(g)^{-1}.
\]
したがって各 \(\rho(g)\) は可逆線形変換です。
表現 \((\rho,V)\) と部分空間 \(W\subset V\) が与えられている。\(W\) が部分表現であることと、任意の \(g\in G\) について \(\rho(g)W\subset W\) であることが同値であることを説明せよ。
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\(W\) が部分表現であるとは、\(W\) 上に \(G\) の作用が制限できるということです。制限作用を定義するには、任意の \(w\in W\) に対して \(\rho(g)w\) が再び \(W\) に入らなければなりません。これはまさに \(\rho(g)W\subset W\) です。逆に、この包含がすべての \(g\) で成り立てば、\(\rho(g)|_W:W\to W\) が定義され、群準同型性は \(V\) 上の等式を制限するだけなので保たれます。
2 つの表現 \((\rho,V)\)、\((\sigma,W)\) が同値であるとはどういう意味か。行列表示で見た場合に何が起こっているか説明せよ。
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同値とは、可逆線形写像 \(T:V\to W\) が存在して、任意の \(g\in G\) について
\[
T\rho(g)=\sigma(g)T
\]
が成り立つことです。これは
\[
\sigma(g)=T\rho(g)T^{-1}
\]
と同値です。したがって行列表示で見ると、すべての \(\rho(g)\) を同じ基底変換 \(T\) で同時に相似変換したものが \(\sigma(g)\) です。表現論では、このような基底の取り替えで変わらない性質を調べます。
有限集合 \(X\) に \(G\) が作用しているとする。ベクトル空間 \(\mathbb C[X]\) を基底 \(\{e_x:x\in X\}\) で定義し、\(\rho(g)e_x=e_{gx}\) とおく。この \(\rho\) が表現であることを示せ。
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まず \(\rho(g)\) は基底を基底へ置換する線形写像なので可逆です。次に
\[
\rho(g)\rho(h)e_x=\rho(g)e_{hx}=e_{g(hx)}=e_{(gh)x}=\rho(gh)e_x.
\]
基底ベクトル上で一致するので \(\rho(g)\rho(h)=\rho(gh)\)。また
\[
\rho(e)e_x=e_{ex}=e_x
\]
なので \(\rho(e)=I\)。ゆえに \(\rho\) は表現です。
前問の置換表現 \(\mathbb C[X]\) の指標が
\[
\chi(g)=\#\{x\in X:gx=x\}
\]
であることを示せ。
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\(\rho(g)\) は基底 \(\{e_x\}\) を置換する置換行列です。置換行列の対角成分は、\(e_x\) が \(e_x\) に送られるとき、すなわち \(gx=x\) のときだけ 1 で、それ以外は 0 です。したがってトレースは対角成分の和、つまり固定点の個数です。
表現 \(V,W\) の指標を \(\chi_V,\chi_W\) とする。\(V\oplus W\)、\(V\otimes W\)、双対 \(V^*\) の指標をそれぞれ書け。
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直和では行列がブロック対角になるので
\[
\chi_{V\oplus W}(g)=\chi_V(g)+\chi_W(g).
\]
テンソル積では \(\rho_{V\otimes W}(g)=\rho_V(g)\otimes\rho_W(g)\) なので、トレースの性質から
\[
\chi_{V\otimes W}(g)=\chi_V(g)\chi_W(g).
\]
双対表現では行列が \(\rho_V(g^{-1})^t\) になるため
\[
\chi_{V^*}(g)=\chi_V(g^{-1}).
\]
有限群の複素表現では固有値が根号 1 の複素数なので、\(\chi_V(g^{-1})=\overline{\chi_V(g)}\) でもあります。
複素表現 \(\rho:G\to GL(V)\) と \(\mathbb C[G]\)-加群構造が同じデータであることを説明せよ。
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表現 \(\rho\) があれば、群環の元 \(\sum_{g}a_g g\) による作用を
\[
\left(\sum_g a_g g\right)v=\sum_g a_g\rho(g)v
\]
で定義します。これは線形性と \(\rho(gh)=\rho(g)\rho(h)\) により \(\mathbb C[G]\)-加群になります。逆に \(\mathbb C[G]\)-加群 \(V\) があれば、各 \(g\in G\subset\mathbb C[G]\) の作用を \(\rho(g)\) とおくと、群環の積から \(\rho(gh)=\rho(g)\rho(h)\)、単位元の作用から \(\rho(e)=I\) が従います。よって両者は同じ情報です。
任意の有限次元複素表現 \(V\) に \(G\)-不変な Hermite 内積が存在することを示せ。
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まず任意の Hermite 内積 \((\, ,\,)_0\) を選びます。次で新しい内積を定義します:
\[
(v,w)=\frac1{|G|}\sum_{g\in G}(\rho(g)v,\rho(g)w)_0.
\]
正定値性と sesquilinear 性は平均から従います。さらに \(h\in G\) に対し
\[
(\rho(h)v,\rho(h)w)
=\frac1{|G|}\sum_{g\in G}(\rho(g)\rho(h)v,\rho(g)\rho(h)w)_0.
\]
\(g\) が \(G\) を走ると \(gh\) も \(G\) を走るので、この和は \((v,w)\) に等しいです。よって内積は \(G\)-不変です。
\(W\subset V\) が部分表現で、\(P:V\to W\) が線形射影、すなわち \(P|_W=\operatorname{id}_W\) とする。
\[
P_G=\frac1{|G|}\sum_{g\in G}\rho(g)P\rho(g)^{-1}
\]
が \(G\)-同変射影であることを示せ。
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まず \(w\in W\) なら \(\rho(g)^{-1}w\in W\) なので
\[
P\rho(g)^{-1}w=\rho(g)^{-1}w.
\]
従って各項 \(\rho(g)P\rho(g)^{-1}w=w\)、ゆえに \(P_G|_W=\operatorname{id}_W\) です。また像は各項で \(W\) に入ります。なぜなら \(P\) の像は \(W\) で、\(W\) は \(G\)-不変だからです。したがって \(P_G^2=P_G\)。同変性は
\[
\rho(h)P_G\rho(h)^{-1}
=\frac1{|G|}\sum_{g\in G}\rho(hg)P\rho(hg)^{-1}=P_G
\]
で示されます。ここで \(g\mapsto hg\) は \(G\) の置換です。
有限群の複素表現 \(V\) と部分表現 \(W\subset V\) に対し、\(G\)-不変な補空間 \(U\) が存在して \(V=W\oplus U\) となることを示せ。
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通常の線形代数により、まず任意の補空間を選べるので、\(W\) への線形射影 \(P:V\to W\) が存在します。前問の平均化により \(G\)-同変射影 \(P_G\) を得ます。\(P_G|_W=\operatorname{id}_W\) なので \(W\cap\ker P_G=0\)。任意の \(v\in V\) に対し
\[
v=P_Gv+(v-P_Gv)
\]
で、\(P_Gv\in W\)、かつ \(P_G(v-P_Gv)=0\) なので \(v-P_Gv\in\ker P_G\)。したがって
\[
V=W\oplus\ker P_G.
\]
さらに \(P_G\) が \(G\)-同変なので \(\ker P_G\) は \(G\)-不変です。
\(V\) を複素数体上の既約 \(G\)-表現とする。任意の \(G\)-同変写像 \(T:V\to V\) はスカラー倍であることを示せ。
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複素数体上なので \(T\) は固有値 \(\lambda\) を持ちます。\(T-\lambda I\) も \(G\)-同変です。その核
\[
\ker(T-\lambda I)
\]
は 0 でない \(G\)-不変部分空間です。\(V\) が既約なので核は \(V\) 全体です。よって \(T=\lambda I\) です。
\(V,W\) を既約表現とし、\(T:V\to W\) を \(G\)-同変写像とする。\(T\neq0\) なら \(T\) は同型であることを示せ。従って \(V\not\cong W\) なら \(\operatorname{Hom}_G(V,W)=0\) である。
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\(\ker T\subset V\) は \(G\)-不変部分空間です。\(V\) は既約で \(T\neq0\) なので \(\ker T\neq V\)、従って \(\ker T=0\)。また \(\operatorname{Im}T\subset W\) も \(G\)-不変で、非零なので \(W\) の既約性から \(\operatorname{Im}T=W\)。よって \(T\) は単射かつ全射、つまり同型です。もし \(V\not\cong W\) なら非零 \(T\) は存在しません。
半単純表現
\[
V\cong\bigoplus_i m_i V_i
\]
において、\(V_i\) が互いに非同型な既約表現であるとする。重複度 \(m_i\) は表現 \(V\) から一意に決まることを、Hom 空間を使って説明せよ。
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Schur の補題により
\[
\dim\operatorname{Hom}_G(V_i,V_j)=
\begin{cases}
1 & (i=j),\\
0 & (i\ne j).
\end{cases}
\]
したがって
\[
\operatorname{Hom}_G(V_i,V)
\cong
\bigoplus_j m_j\operatorname{Hom}_G(V_i,V_j)
\]
の次元は \(m_i\) です。よって
\[
m_i=\dim\operatorname{Hom}_G(V_i,V)
\]
として表現 \(V\) から一意に決まります。
\(N\trianglelefteq G\) とする。\(G/N\) の表現は、\(N\) が自明に作用する \(G\)-表現と同じであることを示せ。
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\(G/N\) の表現 \(\bar\rho:G/N\to GL(V)\) があれば、\(\rho(g)=\bar\rho(gN)\) と定めると \(G\)-表現になります。このとき \(n\in N\) なら \(\rho(n)=\bar\rho(N)=I\) なので \(N\) は自明に作用します。逆に \(G\)-表現 \(\rho\) で \(\rho(n)=I\) がすべての \(n\in N\) について成り立つなら、\(\bar\rho(gN)=\rho(g)\) は well-defined です。実際 \(gN=hN\) なら \(h^{-1}g\in N\) なので \(\rho(g)=\rho(h)\) です。
\(\mathbb C[G]\) 上の左正則作用 \(L_a(e_g)=e_{ag}\) と右正則作用 \(R_b(e_g)=e_{gb^{-1}}\) を考える。任意の \(a,b\in G\) について \(L_aR_b=R_bL_a\) を示せ。
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基底 \(e_g\) に作用させれば
\[
L_aR_b(e_g)=L_a(e_{gb^{-1}})=e_{a g b^{-1}},
\]
一方
\[
R_bL_a(e_g)=R_b(e_{ag})=e_{a g b^{-1}}.
\]
基底上で一致するため \(L_aR_b=R_bL_a\) です。この可換性は群環の左加群構造と右加群構造が互いの中心化代数に入ることを意味します。
表現 \(\rho\) の指標 \(\chi(g)=\operatorname{tr}\rho(g)\) が共役類上で定数であることを示せ。
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任意の \(h,g\in G\) について
\[
\chi(hgh^{-1})
=\operatorname{tr}\rho(hgh^{-1})
=\operatorname{tr}(\rho(h)\rho(g)\rho(h)^{-1}).
\]
トレースは相似変換で不変なので
\[
\operatorname{tr}(\rho(h)\rho(g)\rho(h)^{-1})=\operatorname{tr}\rho(g)=\chi(g).
\]
したがって指標は共役類上で定数です。
class function \(\chi,\psi\) に対し、
\[
\langle\chi,\psi\rangle=\frac1{|G|}\sum_{g\in G}\chi(g)\overline{\psi(g)}
\]
を共役類ごとの和で書き換えよ。
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\(\chi,\psi\) は共役類 \(C\) 上で定数なので、任意の \(g\in C\) に対して値を \(\chi(C),\psi(C)\) と書けます。したがって
\[
\sum_{g\in G}\chi(g)\overline{\psi(g)}
=
\sum_{C}\sum_{g\in C}\chi(C)\overline{\psi(C)}
=
\sum_C |C|\chi(C)\overline{\psi(C)}.
\]
ゆえに
\[
\langle\chi,\psi\rangle
=\frac1{|G|}\sum_C |C|\chi(C)\overline{\psi(C)}.
\]
\(S_3\) の既約指標
\[
1=(1,1,1),\quad \operatorname{sgn}=(1,-1,1),\quad \sigma=(2,0,-1)
\]
について、共役類サイズ \(1,3,2\) を用いて \(\langle\sigma,\sigma\rangle=1\)、\(\langle\sigma,1\rangle=0\) を計算せよ。
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\[
\langle\sigma,\sigma\rangle
=\frac16\{1\cdot 2^2+3\cdot0^2+2\cdot(-1)^2\}
=\frac16(4+0+2)=1.
\]
また
\[
\langle\sigma,1\rangle
=\frac16\{1\cdot2\cdot1+3\cdot0\cdot1+2\cdot(-1)\cdot1\}
=\frac16(2-2)=0.
\]
したがって \(\sigma\) は既約で、自明表現とは直交します。
表現 \(V\) の指標を \(\chi\)、既約表現 \(V_i\) の指標を \(\chi_i\) とする。\(V\) に含まれる \(V_i\) の重複度が \(\langle\chi,\chi_i\rangle\) であることを示せ。
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完全可約性により
\[
V\cong\bigoplus_j m_jV_j
\]
と書けます。指標は直和で足し算になるので
\[
\chi=\sum_j m_j\chi_j.
\]
両辺と \(\chi_i\) の内積を取ると、既約指標の直交性より
\[
\langle\chi,\chi_i\rangle
=\sum_j m_j\langle\chi_j,\chi_i\rangle
=m_i.
\]
これが重複度公式です。
左正則表現 \(\mathbb C[G]\) の指標 \(\chi_{\mathrm{reg}}\) を求めよ。
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左正則表現では \(g\in G\) が基底 \(e_x\) を \(e_{gx}\) に送ります。これは集合 \(G\) 上の置換です。固定点は \(gx=x\) を満たす \(x\) で、これは \(g=e\) のとき全ての \(x\)、\(g\ne e\) のとき存在しません。従って
\[
\chi_{\mathrm{reg}}(g)=
\begin{cases}
|G| & (g=e),\\
0 & (g\ne e).
\end{cases}
\]
正則表現において既約表現 \(V_i\) が \(\dim V_i\) 回現れることを示せ。
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重複度公式を使います。正則指標を \(\chi_{\mathrm{reg}}\)、既約指標を \(\chi_i\) とすると
\[
m_i=\langle\chi_{\mathrm{reg}},\chi_i\rangle
=\frac1{|G|}\sum_{g\in G}\chi_{\mathrm{reg}}(g)\overline{\chi_i(g)}.
\]
正則指標は \(e\) 以外で 0 なので
\[
m_i=\frac1{|G|}|G|\overline{\chi_i(e)}=\dim V_i.
\]
したがって
\[
\mathbb C[G]\cong\bigoplus_i(\dim V_i)V_i.
\]
有限群 \(G\) の複素既約表現の次元を \(d_i\) とすると
\[
\sum_i d_i^2=|G|
\]
であることを示せ。
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正則表現の分解
\[
\mathbb C[G]\cong\bigoplus_i d_i V_i
\]
の両辺の次元を取ります。左辺の次元は \(|G|\)。右辺の次元は
\[
\sum_i d_i\dim V_i=\sum_i d_i^2.
\]
したがって \(\sum_i d_i^2=|G|\) です。
複素既約表現の個数が \(G\) の共役類数と等しいことを、指標の観点から説明せよ。
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class function 全体の空間は、共役類ごとに値を自由に指定できるので、次元が共役類数に等しいです。一方、既約指標は互いに直交する非零 class function です。さらに任意の表現の指標は既約指標の整数結合であり、群環の中心や正則表現の分解を用いると既約指標が class function 空間の基底になることが分かります。したがって既約指標の個数、つまり複素既約表現の個数は、class function 空間の次元である共役類数に等しいです。
既約指標 \(\chi\)、次元 \(d=\chi(e)\) に対して
\[
e_\chi=\frac{d}{|G|}\sum_{g\in G}\chi(g^{-1})g\in \mathbb C[G]
\]
を定義する。この元が \(\chi\)-isotypic 成分への射影を与えることを説明せよ。
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任意の既約表現 \(V_\psi\) 上で \(e_\chi\) は \(G\)-同変自己準同型として作用します。Schur の補題により、その作用はスカラー倍です。そのスカラーのトレースは
\[
\frac{d}{|G|}\sum_{g\in G}\chi(g^{-1})\psi(g)
=d\langle\psi,\chi\rangle.
\]
\(V_\psi\) の次元を \(\psi(e)\) とすると、スカラーはこのトレースを \(\psi(e)\) で割ったものです。従って \(\psi=\chi\) なら 1、\(\psi\ne\chi\) なら 0 になります。よって任意の完全可約表現上で、\(e_\chi\) は \(\chi\)-isotypic 成分を 1 倍し、それ以外を 0 倍する射影です。
指標表の列直交性は、異なる共役類を区別するのにどのように役立つか説明せよ。
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行直交性は既約指標どうしの直交性です。一方、列直交性は、共役類 \(C,D\) に対応する列ベクトルが適切な重み付きで直交することを主張します。特に \(C\ne D\) なら
\[
\sum_{\chi\in\operatorname{Irr}(G)}\chi(C)\overline{\chi(D)}=0
\]
という形の関係が得られます。従って既約指標は共役類を分離します。つまり、2 つの元 \(g,h\) がすべての既約指標で同じ値を持つなら、\(g,h\) は同じ共役類に属します。
指標 \(\chi,\psi\) を持つ表現 \(V,W\) のテンソル積 \(V\otimes W\) を既約分解するにはどうすればよいか。
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まずテンソル積の指標を
\[
\chi_{V\otimes W}(g)=\chi(g)\psi(g)
\]
として求めます。次に各既約指標 \(\chi_i\) に対して
\[
m_i=\langle\chi\psi,\chi_i\rangle
\]
を計算します。すると
\[
V\otimes W\cong\bigoplus_i m_i V_i.
\]
つまり「点ごとの積を作り、既約指標と内積を取る」が手順です。
表現 \(V\) の指標を \(\chi\) とする。\(\operatorname{Sym}^2 V\) と \(\wedge^2 V\) の指標が
\[
\chi_{\operatorname{Sym}^2 V}(g)=\frac{\chi(g)^2+\chi(g^2)}2,\qquad
\chi_{\wedge^2 V}(g)=\frac{\chi(g)^2-\chi(g^2)}2
\]
であることを説明せよ。
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\(V\otimes V\) には交換写像 \(\tau(v\otimes w)=w\otimes v\) があり、\(+1\) 固有空間が \(\operatorname{Sym}^2V\)、\(-1\) 固有空間が \(\wedge^2V\) です。\(g\) の \(V\otimes V\) 上のトレースは \(\chi(g)^2\)。また \((g\otimes g)\tau\) のトレースは \(\chi(g^2)\) です。射影
\[
\frac{1+\tau}{2},\qquad \frac{1-\tau}{2}
\]
のトレースを取ると、上の 2 つの公式が得られます。
表現 \(\rho\) の核を指標から判定する方法を述べよ。特に、ユニタリ表現で \(\chi(g)=\chi(e)\) なら \(\rho(g)=I\) である理由を説明せよ。
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有限群表現はユニタリ化できます。ユニタリ行列 \(\rho(g)\) の固有値は絶対値 1 です。次元を \(n=\chi(e)\) とすると、\(\chi(g)\) は \(n\) 個の単位複素数の和です。この和が \(n\) になるには全ての固有値が 1 でなければなりません。したがって \(\rho(g)=I\)。よって
\[
\ker\rho=\{g\in G:\chi(g)=\chi(e)\}.
\]
表現が忠実であるとは、この集合が \(\{e\}\) だけであることです。
有限群 \(G\) が有限集合 \(X\) に作用しているとする。軌道数が
\[
\frac1{|G|}\sum_{g\in G}\#X^g
\]
に等しいことを、置換表現の自明表現の重複度として説明せよ。
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置換表現 \(\mathbb C[X]\) の指標は \(\chi(g)=\#X^g\) です。自明表現の重複度は
\[
\langle\chi,1\rangle=\frac1{|G|}\sum_{g\in G}\#X^g.
\]
一方、\(\mathbb C[X]^G\) は各軌道上で定数な関数全体であり、その次元は軌道数です。これは自明表現の重複度に等しいので、公式が得られます。
巡回群 \(C_n=\langle r\rangle\) の複素既約表現をすべて求めよ。
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\(C_n\) はアーベル群なので既約表現はすべて 1 次元です。1 次元表現では \(\rho(r)\in\mathbb C^\times\) で、関係式 \(r^n=e\) から \(\rho(r)^n=1\)。従って \(\rho(r)\) は \(n\) 乗根です。 \(\zeta=e^{2\pi i/n}\) として
\[
\chi_k(r^m)=\zeta^{km}\qquad k=0,\dots,n-1
\]
が全既約指標です。
\(C_4\) の生成元を平面の 90 度回転に送る実 2 次元表現を複素化したときの分解を求めよ。
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90 度回転行列の複素固有値は \(i\) と \(-i\) です。\(C_4\) の複素既約表現は生成元 \(r\) を \(1,i,-1,-i\) に送る 1 次元表現です。したがってこの実 2 次元表現を複素化すると
\[
\chi_1\oplus\chi_3
\]
に分解します。ここで \(\chi_1(r)=i\)、\(\chi_3(r)=-i\) です。
\(V_4=\{e,a,b,c\}\) の指標表を書け。ただし全ての非単位元は位数 2 とする。
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\(V_4\) はアーベル群なので共役類は各元 1 つずつ、既約表現はすべて 1 次元です。指標表は
\[
\begin{array}{c|rrrr}
& e&a&b&c\\\hline
\chi_{00}&1&1&1&1\\
\chi_{10}&1&1&-1&-1\\
\chi_{01}&1&-1&1&-1\\
\chi_{11}&1&-1&-1&1
\end{array}
\]
です。非自明な値の割り当ては、積関係 \(ab=c\) を保つように決まります。
\(S_3\) の共役類と既約表現の次元を用いて、指標表を求めよ。
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\(S_3\) の共役類は \(1\)、互換、3-cycle でサイズは \(1,3,2\)。既約表現数は 3 です。自明表現と符号表現が 1 次元で、次元二乗和から残りの次元 \(d\) は
\[
1^2+1^2+d^2=6
\]
なので \(d=2\)。3 点置換表現から自明成分を除くと 2 次元標準表現 \(\sigma\) が得られます。置換表現の指標は固定点数 \((3,1,0)\) なので
\[
\sigma=(3,1,0)-(1,1,1)=(2,0,-1).
\]
従って指標表は
\[
\begin{array}{c|rrr}
&1&(12)&(123)\\\hline
1&1&1&1\\
\operatorname{sgn}&1&-1&1\\
\sigma&2&0&-1
\end{array}
\]
です。
\(S_3\) の自然な 3 点置換表現 \(\mathbb C^3\) を既約分解せよ。
解答を表示
指標は固定点数です。単位元は 3 点固定、互換は 1 点固定、3-cycle は固定点なしなので
\[
\chi=(3,1,0).
\]
\(S_3\) の指標表を使うと
\[
(3,1,0)=(1,1,1)+(2,0,-1).
\]
したがって
\[
\mathbb C^3\cong 1\oplus\sigma.
\]
具体的には、定数ベクトル \((1,1,1)\) が自明成分、和が 0 の平面が標準表現です。
\(S_3\) の 2 次元標準表現 \(\sigma=(2,0,-1)\) について、\(\sigma\otimes\sigma\) を既約分解せよ。
解答を表示
テンソル積の指標は点ごとの積なので
\[
\chi_{\sigma\otimes\sigma}=(2,0,-1)^2=(4,0,1).
\]
既約指標 \(1=(1,1,1)\)、\(\operatorname{sgn}=(1,-1,1)\)、\(\sigma=(2,0,-1)\) との内積を取ると、それぞれ 1,1,1 になります。従って
\[
\sigma\otimes\sigma\cong 1\oplus\operatorname{sgn}\oplus\sigma.
\]
正方形の対称群 \(D_4\) の平面上の自然表現の指標を求め、それが既約であることを確認せよ。
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共役類を \(1,r^2,\{r,r^3\},\{s,r^2s\},\{rs,r^3s\}\) とします。平面上の自然表現では、トレースはそれぞれ
\[
(2,-2,0,0,0)
\]
です。内積は
\[
\frac18(1\cdot 2^2+1\cdot(-2)^2+2\cdot0^2+2\cdot0^2+2\cdot0^2)=1.
\]
指標のノルムが 1 なので、この表現は既約です。
四元数群 \(Q_8\) の共役類が \(1,-1,\{\pm i\},\{\pm j\},\{\pm k\}\) であることを用いて、既約表現の次元を求めよ。
解答を表示
共役類数は 5 なので既約表現は 5 個です。アーベル化は
\[
Q_8/\{\pm1\}\cong V_4
\]
なので 1 次元表現は 4 個あります。残り 1 個の次元を \(d\) とすると、次元二乗和から
\[
4\cdot1^2+d^2=8
\]
なので \(d=2\)。従って \(Q_8\) の既約表現の次元は \(1,1,1,1,2\) です。
\(D_5=\langle r,s\mid r^5=s^2=e,\;srs=r^{-1}\rangle\) の 2 次元表現で、\(r\) を角 \(2\pi m/5\) の回転、\(s\) を反射に送る表現の指標を求めよ。
解答を表示
2 次元回転行列 \(R_\theta\) のトレースは \(2\cos\theta\) です。したがって \(r^k\) での指標は
\[
\chi_m(r^k)=2\cos(2\pi mk/5).
\]
反射行列の固有値は \(1,-1\) なのでトレースは 0 です。従って
\[
\chi_m(sr^k)=0.
\]
\(m=1,2\) が非同型な 2 次元既約表現を与えます。
\(A_4\) の共役類数が 4 で、アーベル化が \(C_3\) であることを用いて、既約表現の次元を求めよ。
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共役類数が 4 なので既約表現は 4 個です。アーベル化が \(C_3\) なので 1 次元表現は 3 個あります。残り 1 個の次元を \(d\) とすると、\(|A_4|=12\) より
\[
1^2+1^2+1^2+d^2=12.
\]
従って \(d^2=9\)、\(d=3\)。次元列は
\[
1,1,1,3
\]
です。
\(S_4\) の標準表現を 4 点置換表現から自明成分を除いて得る。cycle type \((1^4),(2,1^2),(2^2),(3,1),(4)\) での指標を求めよ。
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4 点置換表現の指標は固定点数なので、各 cycle type で
\[
(4,2,0,1,0)
\]
です。標準表現はここから自明表現を 1 つ引くので
\[
(3,1,-1,0,-1).
\]
これが \(S_4\) の 3 次元標準表現の指標です。
\(A_5\) の共役類数が 5 で位数が 60 である。既約表現の次元が \(1,3,3,4,5\) であり得ることを次元二乗和で確認せよ。
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共役類数が 5 なので既約表現は 5 個です。与えられた次元列について二乗和を計算すると
\[
1^2+3^2+3^2+4^2+5^2
=1+9+9+16+25=60.
\]
これは \(|A_5|=60\) と一致します。次元二乗和の必要条件を満たしています。実際、\(A_5\) の複素既約表現の次元列はこの通りです。
\(H\le G\)、\(H\)-表現 \(W\)、\(G\)-表現 \(V\) に対して
\[
\langle\operatorname{Ind}_H^G W,V\rangle_G
=
\langle W,\operatorname{Res}_H^G V\rangle_H
\]
が何を意味するか説明せよ。
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左辺は、\(W\) を \(G\) へ誘導した表現の中に \(V\) が何回現れるかを測ります。右辺は、\(V\) を \(H\) へ制限したとき、その中に \(W\) が何回現れるかを測ります。Frobenius 相互律は、この 2 つの重複度が一致するという主張です。Hom 空間で書けば
\[
\operatorname{Hom}_G(\operatorname{Ind}_H^GW,V)
\cong
\operatorname{Hom}_H(W,\operatorname{Res}_H^GV)
\]
です。
\(H=C_3\le S_3\) とする。\(\operatorname{Ind}_H^{S_3}1_H\) を既約分解せよ。
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\([S_3:C_3]=2\) なので誘導表現の次元は 2 です。これは剰余集合 \(S_3/H\) 上の置換表現です。\(C_3\) は正規部分群なので、\(S_3/C_3\cong C_2\) の正則表現を引き戻したものになります。従って
\[
\operatorname{Ind}_{C_3}^{S_3}1
\cong 1\oplus\operatorname{sgn}.
\]
指標で見ると \((2,0,2)\) で、これは \((1,1,1)+(1,-1,1)\) です。
\(H=\langle(12)\rangle\le S_3\) とする。\(\operatorname{Ind}_H^{S_3}1_H\) を既約分解せよ。
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指数は 3 なので 3 次元です。これは \(S_3\) が 3 個の左剰余類に作用する置換表現で、3 点自然表現と同型です。したがって
\[
\operatorname{Ind}_{C_2}^{S_3}1\cong 1\oplus\sigma.
\]
Frobenius 相互律でも確認できます。任意の \(S_3\) 既約 \(V\) の重複度は
\[
\dim V^{C_2}
\]
です。自明表現では 1、符号表現では 0、標準表現では 1 になります。
\(S_3\) の標準表現 \(\sigma\) を \(C_3=\langle(123)\rangle\) と \(C_2=\langle(12)\rangle\) に制限したときの分解を求めよ。
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\(\sigma\) の指標は \(S_3\) の共役類上で \((2,0,-1)\) です。まず \(C_3\) へ制限すると、値は \(e,r,r^2\) で \((2,-1,-1)\)。\(C_3\) の指標 \(1,\omega,\omega^2\) を用いれば
\[
\operatorname{Res}_{C_3}^{S_3}\sigma\cong \chi_1\oplus\chi_2
\]
です。次に \(C_2\) へ制限すると、値は \((2,0)\)。\(C_2\) の自明指標 \((1,1)\) と非自明指標 \((1,-1)\) の和が \((2,0)\) なので
\[
\operatorname{Res}_{C_2}^{S_3}\sigma\cong 1\oplus\operatorname{sgn}_{C_2}.
\]
1 次元表現 \(\lambda\) と既約表現 \(V\) について、\(\lambda\otimes V\) が既約であることを示せ。
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\(\lambda\) は 1 次元なので \(\lambda^{-1}\) も 1 次元表現です。もし \(\lambda\otimes V\) が可約なら、非自明な部分表現 \(U\) を持ちます。両辺に \(\lambda^{-1}\) をテンソルすると、\(\lambda^{-1}\otimes U\) は \(V\) の非自明な部分表現になります。これは \(V\) の既約性に反します。従って \(\lambda\otimes V\) は既約です。
\(S_4\) の標準表現の指標が \((3,1,-1,0,-1)\)、符号指標が \((1,-1,1,1,-1)\) である。符号をテンソルした指標を求めよ。
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テンソル積の指標は点ごとの積なので
\[
(3,1,-1,0,-1)\cdot(1,-1,1,1,-1)
=(3,-1,-1,0,1).
\]
これは \(S_4\) の別の 3 次元既約表現 \(\operatorname{sgn}\otimes\operatorname{std}\) の指標です。
\(S_3\) の既約指標 \(1,\operatorname{sgn},\sigma\) に対応する中心冪等元の形を、共役類和を用いて書け。
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共役類和を
\[
K_1=e,\quad K_2=\sum_{\text{互換 }t}t,\quad K_3=\sum_{\text{3-cycle }c}c
\]
とします。公式
\[
e_\chi=\frac{d_\chi}{6}\sum_{g\in S_3}\chi(g^{-1})g
\]
を使います。\(S_3\) の指標値は実数なので \(g^{-1}\) の値は同じです。
\[
e_1=\frac16(K_1+K_2+K_3),
\]
\[
e_{\operatorname{sgn}}=\frac16(K_1-K_2+K_3),
\]
\[
e_{\sigma}=\frac{2}{6}(2K_1+0K_2-1K_3)=\frac13(2K_1-K_3).
\]
これらは互いに直交する中心冪等元で、和は 1 になります。
表現 \(V\) の指標 \(\chi_V\) と既約指標 \(\chi_i\) が分かっている。\(V\) の \(V_i\)-isotypic 成分の次元を求める方法を述べよ。
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まず重複度
\[
m_i=\langle\chi_V,\chi_i\rangle
\]
を計算します。\(V_i\)-isotypic 成分は \(m_i\) 個の \(V_i\) の直和なので、その次元は
\[
m_i\dim V_i.
\]
より構成的には中心冪等元
\[
e_i=\frac{\dim V_i}{|G|}\sum_{g\in G}\chi_i(g^{-1})g
\]
を \(V\) に作用させると、その像が \(V_i\)-isotypic 成分です。
\(S_3\) に 2 次元既約表現 \(\sigma\) があり、その指標を \((2,a,b)\) とする。自明指標と符号指標への直交性から \(a,b\) を求めよ。
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共役類サイズは \(1,3,2\) です。自明指標との直交性から
\[
0=\langle\sigma,1\rangle=\frac16(2+3a+2b).
\]
符号指標との直交性から
\[
0=\langle\sigma,\operatorname{sgn}\rangle=\frac16(2-3a+2b).
\]
両式を引くと \(6a=0\)、従って \(a=0\)。これを最初の式に入れると \(2+2b=0\)、従って \(b=-1\)。よって \(\sigma=(2,0,-1)\) です。
有限群の複素表現 \(V,W\) について、\(\chi_V=\chi_W\) なら \(V\cong W\) であることを示せ。
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完全可約性により
\[
V\cong\bigoplus_i m_iV_i,\qquad W\cong\bigoplus_i n_iV_i
\]
と書けます。重複度公式により
\[
m_i=\langle\chi_V,\chi_i\rangle,\qquad n_i=\langle\chi_W,\chi_i\rangle.
\]
もし \(\chi_V=\chi_W\) なら全ての \(i\) について \(m_i=n_i\)。したがって既約分解が同じであり、\(V\cong W\) です。
有限アーベル群 \(A\) の複素既約表現がすべて 1 次元であることを、同時固有ベクトルを用いて示せ。
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\(A\) は可換なので、任意の \(a,b\in A\) について \(\rho(a)\rho(b)=\rho(b)\rho(a)\) です。有限群の元は有限位数なので \(\rho(a)\) は対角化可能です。可換な対角化可能行列族は同時固有ベクトルを持ちます。よって \(0\ne v\in V\) で、すべての \(a\in A\) について
\[
\rho(a)v=\lambda_a v
\]
となるものが存在します。すると \(\mathbb Cv\) は \(A\)-不変部分空間です。\(V\) が既約なら \(\mathbb Cv=V\)。従って \(\dim V=1\) です。