有限群コホモロジーを
「矢印の構造」として見る

この補助レポートは、抽象的な定義をDOTグラフとして可視化するためのものです。有限群コホモロジーでは、複体、導来関手、低次元の分類、部分群への制限、スペクトル系列が頻出します。各概念を「何から何へ矢印が行くか」「どの商を取るか」「どの層で情報が失われるか」という観点で読めるように構成しています。

d3-graphvizで描画DOTを直接編集可能MathJax対応暗色テーマ対応

0. グラフ・ワークベンチ

使い方
下のセレクタで主題を選ぶと、DOTコードと図が切り替わります。DOTを書き換えて「再描画」を押すと、自分用の概念図を作れます。CDNから d3 / d3-graphviz を読み込むため、オンライン環境で最もよく動作します。

図の説明

DOTコード

描画に失敗した場合は、DOTの引用符、セミコロン、波括弧の対応を確認してください。

1. 読図の基本:有限群コホモロジーで何を図示しているか

有限群コホモロジーの定義は、圏論的には

\[ H^n(G,A)=R^n(-)^G(A)=\operatorname{Ext}^n_{\ZZ G}(\ZZ,A) \]

である。ここで \(A\) は左 \(\ZZ G\)-加群、\(A^G\) は不変元加群である。図で見ると、主役は次の4種類の矢印である。

複体の矢印

共鎖群 \(C^n(G,A)\) と微分 \(d:C^n\to C^{n+1}\)。コホモロジーは \(\Ker d/\Im d\) であり、「閉じているもの」を「明らかに変形で消えるもの」で割る。

関手の矢印

不変元関手 \((-)^G\) は左完全だが一般に完全でない。その失敗量が右導来関手 \(R^n(-)^G\) として測られる。

制限・移送の矢印

部分群 \(H\le G\) に対して \(\res^G_H:H^n(G,A)\to H^n(H,A)\) と \(\cor^G_H:H^n(H,A)\to H^n(G,A)\) がある。両者の合成は指数倍を含む。

分類への矢印

\(H^1\) はねじれ準同型、\(H^2\) は拡大、\(H^3\) は障害や結合子を分類する。低次元では代数的対象の同値類がコホモロジー類になる。

1.1 情報フロー図

「入力 \((G,A)\) から \(H^n(G,A)\) まで」を図示すると、どの段階で商を取るのかが明瞭になる。

G と A → 共鎖 C^n(G,A) → 微分 d → Z^n と B^n → 商 Z^n/B^n

1.2 バー解像度の読図

標準非斉次複体では \(C^n(G,A)=\{f:G^n\to A\}\) であり、微分は

\[ \begin{aligned} (df)(g_1,\ldots,g_{n+1})={}&g_1 f(g_2,\ldots,g_{n+1})\\ &+\sum_{i=1}^n(-1)^i f(g_1,\ldots,g_i g_{i+1},\ldots,g_{n+1})\\ &+(-1)^{n+1}f(g_1,\ldots,g_n). \end{aligned} \]

バー解像度の図では、\([g_1|\cdots|g_n]\) というバー記号が、隣接する2つの群元を掛ける面写像と、端の群元を消す面写像で結ばれる。

1.3 低次元の読図

次数意味
\(H^0(G,A)\)\(A^G\)群作用で動かない元。
\(H^1(G,A)\)交叉準同型 / 主交叉準同型\(f(gh)=f(g)+g f(h)\) を満たす写像の変形類。
\(H^2(G,A)\)2-コサイクル / 2-コバウンダリ\(A\) による \(G\) の拡大の同値類。非可換な持ち上げの掛け算のずれ。
\(H^3(G,A)\)3-コサイクル拡大問題やモノイド圏的結合則の障害。

1.4 巡回群の周期性

\(C_n=\langle t\rangle\) の場合、\(N=1+t+\cdots+t^{n-1}\) と \(T=t-1\) によって周期的解像度が書ける。コホモロジーは

\[ H^{2i}(C_n,A)=A^{C_n}/N(A),\qquad H^{2i+1}(C_n,A)=\Ker N/T(A) \]

である。ただし \(H^0=A^{C_n}\) は別に読む。図では、\(T\) と \(N\) が交互に現れる2周期の矢印列として表される。

1.5 制限・コア制限・Sylow

\(H\le G\) に対し、制限は「\(G\)-共鎖を \(H\)-共鎖として見る」写像で、コア制限は代表元に沿って和を取って戻す写像である。有限群では

\[ \cor^G_H\circ\res^G_H=[G:H]\cdot \operatorname{id} \]

が成り立つ。特に \(p\)-Sylow 部分群 \(P\le G\) に対して \([G:P]\) は \(p\) と互いに素なので、\(p\)-一次成分は \(P\) への制限で強く制御される。

1.6 拡大と2-コサイクル

集合として \(E=A\times G\) と置き、関数 \(\alpha:G\times G\to A\) により

\[ (a,g)(b,h)=(a+g b+\alpha(g,h),gh) \]

と掛け算を定める。結合法則は

\[ g\alpha(h,k)-\alpha(gh,k)+\alpha(g,hk)-\alpha(g,h)=0 \]

という2-コサイクル条件そのものである。切断 \(s:G\to E\) の取り替えは \(\alpha\) に2-コバウンダリを足すことに対応する。

1.7 LHSスペクトル系列

短完全列 \(1\to N\to G\to Q\to 1\) から、Lyndon--Hochschild--Serre スペクトル系列

\[ E_2^{p,q}=H^p(Q,H^q(N,A))\Longrightarrow H^{p+q}(G,A) \]

が得られる。図では、縦方向が \(N\) のコホモロジー、横方向が商群 \(Q\) のコホモロジーを表す格子として読む。

2. DOT文法メモ:数学図を自分で増やす

最小例

digraph G {
  rankdir=LR;
  A -> B [label="d"];
  B -> C [label="d"];
}

有向グラフは digraph、矢印は ->。横向きにしたいときは rankdir=LR

ノードの意味を色分け

node [shape=box, style="rounded,filled"];
cochains [fillcolor="#eef2ff"];
cocycles [fillcolor="#ecfdf5"];
boundaries [fillcolor="#fff7ed"];

「共鎖」「コサイクル」「コバウンダリ」「商」を別色にすると、どこで情報を失うかが見やすい。

このレポートの図を改造するための方針
  1. ひとつの図に入れる数学概念は最大8個程度に抑える。
  2. 矢印ラベルには「写像の名前」だけでなく「何をしているか」を短く書く。
  3. 商を取る箇所は二重丸または太枠にする。
  4. スペクトル系列は全ページを図にしようとせず、\(E_2\), 微分 \(d_r\), 収束先の3層だけに分ける。

3. 読図訓練チェックリスト

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作成物: finite_group_cohomology_graphviz.html