自明群
設定: 自明群 \(1\) と任意の加群 \(A\)
分類空間は一点で、代数的にも不変元関手が恒等関手になる。高次導来関手は存在しない。
抽象論を理解する最短経路は、同じ定義がさまざまな群・係数・作用でどのように変化するかを比較することです。このレポートでは、消滅例、巡回群、符号作用、mod \(p\) 環、初等アーベル群、\(S_3\)、\(Q_8\)、拡大分類、Shapiro補題まで、計算例を横断的に整理します。
係数を \(A=\ZZ/m\ZZ\) とし、生成元 \(t\) が \(x\mapsto a x\) で作用するとする。作用が正しく定まる条件は \(a^n\equiv1\pmod m\)。このとき
\[ H^{2i}(C_n,A)=A^{C_n}/N(A),\quad H^{2i+1}(C_n,A)=\Ker N/(t-1)A, \]ただし \(H^0=A^{C_n}\)、\(N=1+t+\cdots+t^{n-1}\)。下の計算機は元を全列挙して商の位数を表示する。
集合 \(\ZZ/m\ZZ\) の元を \(0,1,\ldots,m-1\) として列挙し、\(A^{C_n}=\{x:(a-1)x=0\}\)、\(N(A)=\{(1+a+\cdots+a^{n-1})x:x\in A\}\)、\(\Ker N=\{x:Nx=0\}\)、\((t-1)A=\{(a-1)x:x\in A\}\) を計算している。\(\ZZ/m\ZZ\) の部分群の商なので、表示される商は巡回群である。
同じ群でも \(\ZZ\), \(\QQ\), \(\QQ/\ZZ\), \(\FF_p\) で結果は大きく変わる。特に \(|G|\) が係数上可逆なら高次は消える。
自明作用では \(H^1=\Hom(G,A)\) だが、非自明作用では交叉準同型になり、\(H^0=A^G\) から変わる。
\(H^2\) は拡大を分類し、\(H^3\) は障害やSchur multiplierと関係する。計算結果の「意味」を見る。
設定: 自明群 \(1\) と任意の加群 \(A\)
分類空間は一点で、代数的にも不変元関手が恒等関手になる。高次導来関手は存在しない。
設定: \(|G|\) が \(A\) 上可逆
平均化作用素により、持ち上げやコサイクルを不変化できる。標数が群位数を割らない体上の表現で頻出する消滅原理。
設定: \(C_n\) が \(\ZZ\) に自明作用
周期解像度で \(t-1=0\), \(N=n\) となる。偶数正次数では \(\ZZ/n\ZZ\)、奇数次では \(\ZZ[n]=0\)。
設定: \(C_n\) が \(\ZZ/m\ZZ\) に自明作用
有限巡回加群では \(n\)-torsion と \(n\) 倍写像の余核が同じ位数を持つ。
設定: \(C_n\) が \(\QQ\) に自明作用
\(n\) 倍写像が \(\QQ\) 上可逆であるため、平均化で高次が消える。
設定: \(C_n\) が \(\QQ/\ZZ\) に自明作用
\(\QQ/\ZZ\) は可除なので \(n(\QQ/\ZZ)=\QQ/\ZZ\)。一方、\(n\)-torsion は \(1/n\) 型の元で作られる。
設定: \(p\) 素数、\(\FF_p\) は自明加群
標数が群の位数を割ると高次コホモロジーが大量に残る。表現論の非半単純性を測る基本例。
設定: \(C_2=\langle s\rangle\), \(s\cdot a=-a\) on \(\ZZ\)
ここでは \(N=1+s=0\), \(s-1=-2\)。奇数次は \(\ZZ/2\ZZ\)、偶数正次数は不変元がないので0。
設定: \(s\cdot x=-x\) on \(\ZZ/4\ZZ\)
不変元は \(0,2\)。ノルムは0、\(s-1=-2\) の像も \(0,2\) である。
設定: 作用が自明な任意の有限群 \(G\) とアーベル群 \(A\)
交叉準同型の式が通常の準同型の式 \(f(gh)=f(g)+f(h)\) になり、主交叉準同型は0になる。
設定: 自明作用
生成元の像は \(n a=0\) を満たす元で自由に決まる。
設定: \(H^2(C_2,C_2)\), 自明作用
0類は分裂拡大 \(C_2\times C_2\)、非0類は \(C_4\) を与える。
設定: \(G\) 有限、\(\ZZ\) 自明加群
有限群から無限巡回群への準同型の像は有限部分群でなければならないが、\(\ZZ\) の有限部分群は0のみ。
設定: \(G\) 有限、\(\ZZ\) 自明加群
短完全列 \(0\to\ZZ\to\QQ\to\QQ/\ZZ\to0\) と \(H^{>0}(G,\QQ)=0\) から次元シフトで得られる。
設定: \(S_3\cong D_6\), 自明 \(\ZZ\) 係数
短完全列 \(1\to C_3\to S_3\to C_2\to1\) のLHSスペクトル系列で、\(C_2\) が \(H^2(C_3,\ZZ)\) に反転作用することが要点。
設定: \(\FF_2\) 自明係数
\(C_3\) の高次 \(\FF_2\)-コホモロジーは消え、LHSで商 \(C_2\) のコホモロジーだけが残る。
設定: \(\FF_3\) 自明係数
\(H^*(C_3,\FF_3)=\FF_3[u]\otimes\Lambda(v)\) に、商 \(C_2\) が反転で作用する。不変な単項式は \(u^2\) と \(uv\) で生成される。
設定: \(E=(C_p)^r\), \(\FF_p\) 自明係数
Künneth公式と \(C_p\) の計算を組み合わせる。
設定: \(V_4=C_2\times C_2\), \(\FF_2\) 自明係数
次数2には \(x^2,xy,y^2\) の3次元分があり、\(C_2\) による中心拡大の代表を多く含む。
設定: \(V_4\), 自明 \(\ZZ\) 係数
\(H^2(G,\ZZ)\) はアーベル化の双対、\(H^3(G,\ZZ)\) はSchur multiplierの双対である。
設定: \(A=\Map(G/H,M)\) 型の余誘導加群
特に \(H=1\) なら高次コホモロジーは0。計算を部分群に移す標準的な方法。
設定: \(A=\Map(G,M)\) with left translation
これはShapiro補題の \(H=1\) の場合。共誘導加群はコホモロジー的に非輪状である。
設定: \(A_5\), 自明 \(\ZZ\) 係数
\(A_5\) は完全群なので \(H^2(A_5,\ZZ)=\Hom((A_5)_{ab},\QQ/\ZZ)=0\)。Schur multiplier が \(C_2\) なので \(H^3\) に現れる。
設定: 四元数群 \(Q_8\), 自明 \(\ZZ\) 係数
\(Q_8\) は周期的コホモロジーを持つ有限群の代表例。
設定: \(P\) が \(p\)-Sylow 部分群
\(\cor_P^G\circ\res_P^G=[G:P]\) であり、\([G:P]\) は \(p\) と互いに素なので \(p\)-primary な元を殺さない。
設定: \(V=(C_p)^2\), 係数 \(C_p\)
非退化交代形式から mod \(p\) Heisenberg 群が得られる。2-コサイクルが非可換性を作る典型例。
設定: \(C_p\), \(\FF_p\) 係数
\(v\cup v=0\) は外代数部分を、\(u\) の冪は多項式部分を表す。
設定: \(C_n\) と任意の \(C_n\)-加群 \(A\)
通常コホモロジーの2周期性を負次数まで延長したもの。
設定: \(0\to A\to E\to G\to1\) が分裂
準同型切断を選ぶと因子集合 \(\alpha(g,h)=0\) になる。逆に2-類が0なら切断を補正して準同型切断にできる。
設定: \(C_3\) が \(\ZZ/7\ZZ\) に2倍写像で作用
作用が非自明だと0次から既に情報が変わる。下の巡回群計算機で \(n=3,m=7,a=2\) を試すとよい。
| 設定 | 結果 | 見るべき点 |
|---|---|---|
| 一般作用 | \(H^{2i}=A^{C_n}/N(A)\), \(H^{2i+1}=\Ker N/(t-1)A\) | 2周期性。 |
| 自明作用、\(A=\ZZ\) | 偶数正次数 \(\ZZ/n\ZZ\)、奇数次0 | 整数係数の最基本例。 |
| 自明作用、\(A=\FF_p\) | \(p\mid n\) なら高次が残り、\(p\nmid n\) なら消える | 標数と群位数の関係。 |
| 符号作用 | 不変元、ノルム、\(t-1\) の像が変化 | 作用を忘れると誤答になる。 |
| 群 | 係数 | 代表的結果 |
|---|---|---|
| \(S_3\) | \(\ZZ\) | 奇数次0、\(H^{4k+2}\cong\ZZ/2\ZZ\)、\(H^{4k}\cong\ZZ/6\ZZ\)。 |
| \(S_3\) | \(\FF_2\) | \(\FF_2[x]\), \(\deg x=1\)。 |
| \(S_3\) | \(\FF_3\) | \(\FF_3[u^2]\otimes\Lambda(uv)\)。 |
| \(A_5\) | \(\ZZ\) | \(H^2=0\), \(H^3\cong C_2\)。 |
| コホモロジー群 | 分類するもの | 典型例 |
|---|---|---|
| \(H^2(C_2,C_2)\cong C_2\) | \(C_2\) による \(C_2\) の中心拡大 | \(C_2\times C_2\) と \(C_4\)。 |
| \(H^2(V_4,C_2)\) | \(C_2\) による \(V_4\) の中心拡大 | \(C_2^3\), \(C_4\times C_2\), \(D_8\), \(Q_8\) などの構造が現れる。 |
| \(H^2(G,\QQ/\ZZ)\) | 射影表現の因子集合 | Schur multiplier の双対。 |
作成物: finite_group_cohomology_examples.html